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洋画専門分野卒業生の後藤靖香さんによる個展「壽三郎ノ罷リ路」が開催中

芸術学部洋画専門分野卒業生で現代美術家の後藤靖香さんによる個展「壽三郎ノ罷リ路」が、大阪市西区のTEZUKAYAMA GALLERYで開催されています。
 
後藤さんは2004年に本学を卒業後、個展やグループ展に多数参加し、「咲くやこの花賞」や「絹谷幸二賞」を受賞するなど精力的に活躍する現代美術家です。祖父や大叔父の戦争体験をはじめ、歴史の中に埋没した個人史や記憶を丹念に掘り起こし、劇画調の筆致で大画面に描きだす表現で知られています。大胆な構図と圧倒的な存在感を持つ作品は、鑑賞者に強い印象を与えます。近年は人形浄瑠璃?文楽を題材に新たな表現にも挑戦しています。
 
本展は、原爆で命を落とされた親族の後藤壽三郎氏を起点に展開されます。後藤さんはこれまで家族の戦争体験や人々の記憶を描いてきましたが、今回初めて「原爆?ヒロシマ」という題材に個人的な繋がりを通じて対峙します。今年、終戦から80年を迎える中、消えゆく記憶や声をどのように形にし、未来へ引き継ぐかを静かに問いかけます。ぜひご覧ください。
 
 
 

アーティストステートメント

私には後藤壽三郎という爆心地で亡くなった親族がいる。
一般的に広島の爆心地は原爆ドームと認知されているが、本当の爆心地は島病院であり、
壽三郎はその島病院の真向かいにあった広島郵便局で働いていた。
本来なら定年退職している年齢だが、戦時下ゆえ数少ない男性職員として働き続けていたのだろう。
1945年8月6日の原爆投下の際もその郵便局で勤務しており他の職員、動員された学徒たちと共に原爆の直撃を受け亡くなっている。
壽三郎の遺体は判別できず、住まいも爆心から1.3キロにあり、遺品や写真も全て焼けて何も残らなかった。
唯一残っているとすれば彼が退職後に余生を過ごすはずだった後藤本家の家屋だけだろう。
その本家も高速道路の整備の際に解体され、今は私が住んでいる分家の家屋の部材として再利用されるに至った。
「私は壽三郎の帰るべき場所を奪ってしまったのかもしれない」
そんな妄想が頭を過ぎる。
これまで私は特攻兵だった祖父や戦中の逸話などをモチーフに戦争画を描いてきた。
戦後の日本において加害者の物語はある種のタブーになったと言えるだろう。
戦争画は戦争を美化し賛美していると咎められかねない。
だが私は敢えて描いてきた。
戦後、被害者の物語は手厚く語られてきたが、加害者の側にもまだ語り得ぬ物語があると感じているからだ。
私の絵はそんな『語り得ぬ加害者の物語』なのだ。
だが、今思えばそれは自分自身も加害者かもしれないという不安からだったのかもしれない。
そして壽三郎に関して調べる中で自分が住む家が壽三郎の家だったと知り、不安は現実味を増した。
だからきっと私は、私自身の物語も描かねばならないだろう。
本作のタイトルにある「罷り路」とは家へ帰る道、あるいは死者の行く道、冥土への道といった意味合いの言葉だ。
亡くなった壽三郎が帰るべき場所で、いま私は生きている。
ゆえに本作は後藤壽三郎の物語であり、私、後藤靖香の物語でもある。
 
後藤靖香

  • 日程

    2025年9月20日(土)~10月18日(土)
    日?月?祝日 休廊

  • 時間

    12:00~19:00

  • 会場

    〒550-0015 大阪府大阪市西区南堀江1-19-27山崎ビル2F
     
  • 出演?出展者

    後藤靖香(美術家/芸術学部洋画専門分野 卒業)

  • 予約

    不要

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